COMIXAI吉川 聡史
基礎知識すくれいぴんぐ2026年10月20日更新Web Scraping

スクレイピングとは?

DEFINITION — ひとことで言うと

ウェブページから必要な情報を機械で抜き出すこと。AIの学習データ集めも大半がこれにあたる。技術的にできるかどうかと、していいかどうかは別の話で、著作権と利用規約の2つを見る必要がある。

DIAGRAM — 図解
スクレイピングの流れと、止める2つの層の図解集める流れ巡回して集めるクローリング必要な部分を抜くスクレイピング使う学習・分析・転載止める側には2つの層があるrobots.txt機械への意思表示利用規約契約としての取り決め片方だけを見ても、実際の扱いは決まらない
技術的にできることと、していいことは別

スクレイピングは、ウェブページの中から欲しい部分だけを機械的に取り出す作業を指します。人が画面を見てコピーするのと、やっていること自体は変わりません。違うのは速さと量で、人なら1日かかる収集が数分で終わります。よく一緒に出てくる「クローリング」は、リンクをたどってページを次々に巡回して集めてくる作業のこと。集めてくるのがクローリング、集めたものから必要な部分を抜くのがスクレイピングで、実務ではひと続きの流れになります。生成AIの学習データも、価格の比較サイトも、ニュースの集約サービスも、この工程を土台にしています。

2026年10月、この言葉がニュースに出たのはMetaの規約がきっかけでした。10月30日に発効予定だった事業者向けの規約に、集めた内容の使い道として「学習」が挙げられており、報道機関などから批判が出ます。Metaは10月16日ごろにこの語を削除し、用途を広告とビジネス製品に限る形に改めました。ただし専門家からは、「開発」という語が残っていることなどを理由に、懸念は解消していないという指摘も出ています。技術の話ではなく、文書に何と書いてあるかで扱いが変わる——スクレイピングという行為の性格がよく出た出来事でした。

どこまでが許されるのか

日本での整理を大まかに言うと、スクレイピングそのものが直ちに違法になるわけではなく、取り方と使い方で判断が分かれる、というのが複数の法律事務所の解説に共通する説明です。AIの学習との関係では、著作権法の30条の4がよく挙げられます。作品を楽しむこと(享受)を目的としない情報解析のための利用は、著作権者の許諾がなくても認められる、という定めで、学習のための複製はここに当たる方向で整理されています。ただし「著作権者の利益を不当に害する場合」は除かれるという但し書きがあり、学習用に販売されているデータベースを無断で使う場合などが例として挙げられています。

そしてもうひとつ、著作権とはまったく別の層があります。利用規約です。多くのサイトが規約でスクレイピングを禁じており、これは契約の問題なので、著作権法で説明がついても規約違反は残ります。2026年10月のMetaの件は向きが逆で、規約の側に「集めた内容をこう使える」と書く動きでした。robots.txtが機械への意思表示だとすれば、規約は契約としての取り決め。どちらか片方だけを見ても、実際の扱いは決まりません。

この項は法律の相談に答えるものではありません。判断が要る場面——とくに商用で集める、個人情報が混ざる、相手が明示的に禁じている——では、専門家に確認してください。

集める側になるときの作法

自分が集める側に回るなら、順番は決まっています。①相手の利用規約を読む。禁止と書いてあればそこで終わりです。②robots.txtを見る。機械向けの意思表示が書かれています。③取りに行く間隔をあける。短時間に大量の要求を送れば、相手のサーバーに負荷をかける行為として別の問題になりえます。④公開されている情報でも、個人に関する情報は扱いが別だと考える。

もうひとつ実務的なのが、公式の入口があるなら先にそちらを探すことです。APIやデータの配布が用意されていれば、規約も使い方もはっきりしていて、相手にも負荷がかかりません。スクレイピングは「ほかに手段がないときの方法」と位置づけておくと、揉め事の大半は避けられます。

自分のサイトを守る側なら

見ておくのは3つです。①robots.txtで、AI学習向けのクローラーに対する意思表示を書く(相手ごとに分けて書けます)。②使っているサービスの利用規約を読む。とくに大手の事業者向けアカウントにサイトが紐づいている場合、規約の側で収集や利用が認められていることがあります。③アクセスログを見る。見覚えのない国からの急な増加が、実はAIのクローラーだった、というのはよくある話です。

完全に止めるのは現実には難しい、というのも事実です。だからこそ「断る意思表示をしておくこと」と「規約の改定に気づけること」の2つで、できる範囲を押さえるのが現実的な守り方になります。技術的にできることと、していいこと。この2つがずれているときに起きるのが、スクレイピングをめぐるトラブルです。

スクレイピングのよくある質問

Q.スクレイピングとは何ですか?
A.

ウェブページから必要な情報を機械的に抜き出すことです。リンクをたどって巡回する作業はクローリングと呼ばれ、集めてきたものから必要な部分を取り出すのがスクレイピングにあたります。生成AIの学習データ集めも、大半がこの工程を土台にしています。

Q.スクレイピングは違法ですか?
A.

一概には言えません。日本では、著作権法30条の4が、作品を楽しむことを目的としない情報解析のための利用を許諾なしで認めており、AIの学習はここに当たる方向で整理されています。ただし権利者の利益を不当に害する場合は除かれますし、著作権とは別に利用規約の問題が残ります。判断が要る場面では専門家に確認してください。

Q.自分のサイトがAIに学習されるのを止められますか?
A.

robots.txtでAI学習向けのクローラーに意思表示できます。ただしそれは機械への意思表示であって契約の話ではないため、使っているサービスの利用規約の側で収集や利用が認められている場合があります。2026年10月にはMetaの事業者向け規約が実際に論点になりました。両方を見るのが安全です。

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