AIは100案出す係。人間は「ひっかかり」を見つける係。
キャッチコピーは「たくさん出して捨てる」仕事です。プロのコピーライターも1本のために100本書きます。この物量戦こそAIの独壇場——ただし、頼み方を間違えると100本全部が同じ味のダジャレになります。
コピーの原料は言葉のセンスではなく、ターゲットの本音です。誰が・何に困っていて・本当は何と言われたいのか。これを渡してから量産させると、100本の中に「おっ」と手が止まる数本が混ざるようになります。
「1. 一杯の幸せを、あなたに。 2. 香りで始まる、特別な一日。 3. こだわりの一杯が、ここにある。——」…どこかで見たフレーズの再放送が10本並びます。このコピーが刺さる相手は、世界に一人もいません。
ターゲットも、店の個性も、競合との違いも渡していないので、AIは「コーヒーショップのコピーの平均値」を出力します。コピーの平均値とは、つまり誰の記憶にも残らない言葉のことです。
また10案は少なすぎます。AIの1〜10案目は頭に浮かびやすい定番から出てくるので、面白いものは20案目以降に潜んでいることが多いのです。
【 】の中を自分の状況に書き換えて使ってください。全部埋まらなくても大丈夫——埋めた分だけ、出力があなた仕様になります。
「チェーンの味に飽きた」という一行から、AIは何十通りもの言い換えを生成できます。商品の説明よりも、ターゲットの心の声を渡すほうがコピーは強くなります。
「30案出して」だけだと同じ発想の言い換えが並びます。本音型・事実型・逆張り型のように枠を切ると、発想の重複が構造的に防げます。
AIは放っておくと語呂合わせに逃げます。「うまいこと言った風」を明示的に禁止するだけで、打率が目に見えて上がります。
看板は3秒、Instagramは0.5秒。コピーを見る場所と時間で、適切な長さと強さが変わります。メディアの指定は文字数指定より効きます。
30案から気になる1本を選んで「この方向で、もっと言い切りを強く10本」と掘るのが正しい2手目です。1回で決めず、選ぶ→増やすを2〜3周すると精度が上がります。
コピーが決まったら「このキャッチコピーに続く、100字のボディコピーを3案。キャッチで作った期待を裏切らずに事実で支える内容で」と続ければ、広告文一式が揃います。
「このコピーとABテストで戦わせるなら、真逆のアプローチはどんなコピー?」と頼むと、テスト設計まで見据えた選択肢が手に入ります。
AIは学習した有名コピーに似た案を出すことがあります。使用前に「そのままのフレーズ」で検索し、有名企業の現行コピーと被っていないか確認してください。商標登録されているフレーズには特に注意が必要です。
「日本一」「必ず痩せる」のような表現は景品表示法や薬機法に触れる可能性があります。AIは規制を完全には守ってくれないので、業種の広告ルールに照らした最終チェックは人間の仕事です。
むしろ逆で、選ぶ目の価値が上がります。AIは100案出せますが、どれが刺さるかの判断はターゲット理解と経験の領域です。プロの仕事が「書く」から「設計して選ぶ」に移る、と考えるのが実態に近いです。
全部を精読する必要はありません。ざっと眺めて「手が止まった案」に印をつけるだけでOK。1本も引っかからなければ、原料(ターゲットの本音)を書き直して再挑戦するほうが、読み込むより早く良い結果になります。
レシピは覚えるより、今日の仕事でひとつ試すほうが早い。