白紙とにらめっこする時間を、たたき台を選ぶ時間に変える。
企画仕事でいちばん時間を溶かすのは、最初の一歩——白紙の状態から「なにか」を出すところです。生成AIはここが異常に得意で、方向性の違うたたき台を10分で10本出せます。人間の仕事は、書くことから選んで磨くことに変わります。
ただし「企画を考えて」だけでは、実現性を無視したアイデアの霧が出てくるだけです。効くのは制約条件。予算・期間・使える資産・やらないことを渡した瞬間、AIの出力は「発想」から「企画」に変わります。
「1. SNSキャンペーンの実施 2. インフルエンサーマーケティング 3. 会員限定イベントの開催 4. サブスクリプションモデルの導入——」…ビジネス書の目次のような施策名の羅列が出てきます。どれも間違いではないが、自社で明日から動かせるものはひとつもありません。
「自社」の中身——商材、顧客、予算、人手、過去にやって失敗したこと——を何も渡していないので、AIは世の中の施策カタログを読み上げるしかありません。企画の価値は「自社の条件で成立すること」にあるのに、その条件が全部欠けています。
さらに、評価軸がないため、AIはアイデアを絞り込めません。10案を10案のまま渡されても、選ぶ側の負担は白紙のときと大差ないのです。
【 】の中を自分の状況に書き換えて使ってください。全部埋まらなくても大丈夫——埋めた分だけ、出力があなた仕様になります。
「50万円・3ヶ月・広告NG」という縛りが、施策カタログを自社専用の企画に変えます。制約は創造性の敵ではなく、AIにとっては最高の設計図です。
「SNSは挫折済み」と伝えないと、AIは真っ先にSNS運用を提案してきます。やって駄目だったことは、プロンプトに書くだけで二度と提案されなくなります。
5案を並列で受け取るより、AI自身に優先順位と理由を言わせるほうが検討が速く進みます。理由に納得できなければ、そこから対話で掘ればいい。
企画倒れの原因は、初動が曖昧なことです。「来週何をするか」まで具体化させると、たたき台の実現性が一目で判定できます。
「本命案を、上司に見せるA4一枚の企画書にして。構成は背景/企画概要/期待効果/スケジュール/予算」と続ければ、たたき台から提出物まで同じ会話で進めます。
「この企画に反対する立場から、痛いところを5つ突いて」と頼むと、上司や会議で刺される前に弱点を潰せます。AIは遠慮なく批判させると本領を発揮します。
「この課題に対して、まったく別の業界ではどんな解決が行われているか。5業界分、うちに移植するとしたらどうなるかもセットで」と頼むと、発想の幅が一気に広がります。
売上や利益率などの機密数字は、桁感がわかる程度(「問い合わせ2割減」など)に丸めて渡しても、企画の質はほぼ落ちません。生の経営数字を入れる前に、社内のAI利用ルールを確認してください。
たたき台にAIが添えてくる「市場規模◯◯億円」「◯◯%の企業が導入」といった数字は、実在しないことがあります。企画書に昇格させる際は、根拠数字を必ず一次情報に差し替えてください。
AIのたたき台は「うちの会社らしさ」が薄い状態です。現場の肌感、顧客の生の声、あなた自身の仮説を1つ以上足してから提出する——それだけで「AIっぽい企画」から「あなたの企画」になります。
2つ試してください。①「大穴枠」のように意外性を明示的に要求する、②「小学生向けに説明すると?」「制約が10倍厳しかったら?」のように視点をずらす追い質問をする。AIの初手は平均的で、掘ると面白くなるのが基本挙動です。
企画の方向性やアイデア自体に著作権はありませんが、特定の他社キャンペーンの丸写しに近い案が出ることはあります。固有名詞つきの類似例がないか、実行前に軽く検索して確認すると安心です。
レシピは覚えるより、今日の仕事でひとつ試すほうが早い。