COMIXAI吉川 聡史
企画・マーケティング

ペルソナ作成のプロンプト

AIに丸投げしたペルソナは、あなたに都合のいい架空の顧客になる。

ペルソナ——商品やサービスの典型的な顧客像を1人の人物として描く手法は、マーケティングの定番です。そして「人物像を描写する」のは生成AIの得意技。属性・悩み・情報収集の行動まで、驚くほどそれらしい人物が数秒で出てきます。

ところが、この「それらしさ」こそが罠です。材料を渡さずに作らせたペルソナは、実在の顧客ではなく、あなたの商品を好きでいてくれる架空の理想客になります。このレシピの核心は、AIに想像させる前に実データを渡すこと。そして、データにある部分とAIが補った部分を、はっきり区別させることです。

まず、事故る指示から見る

BAD PROMPT — ありがちな頼み方

うちの商品のペルソナを作って。20代女性向けのスキンケア商品です。

↓ すると、こうなる

「佐藤美咲さん、26歳。都内在住のIT企業勤務。美容感度が高くInstagramで情報収集し、月1万円をスキンケアに投資。成分にこだわり、共感できるブランドストーリーを重視——」…名前も生活も細部まで揃った、完璧な人物像が出てきます。完璧すぎるのが問題です。この人は実在せず、根拠もどこにもありません。

AIはあなたの顧客を1人も知りません。渡されたのが「20代女性向けスキンケア」だけなら、世の中のマーケティング記事にある平均的な20代女性像をなぞるしかない。出てくるのは自社の顧客ではなく、どの会社の資料にも載っていそうな量産型ペルソナです。

もっと怖いのは、名前と暮らしぶりがつくと信じたくなることです。根拠ゼロの人物像でも、具体的に書かれていると「顧客はこうに違いない」と思えてしまう。検証していない想像が、施策を決める判断材料に化ける——ペルソナ作成でいちばん起きやすい事故です。

コピペで使えるプロンプト

【 】の中を自分の状況に書き換えて使ってください。全部埋まらなくても大丈夫——埋めた分だけ、出力があなた仕様になります。

GOOD PROMPT — このままコピペOK
あなたは顧客理解を専門とするマーケティングリサーチャーです。
以下の実データをもとに、ペルソナのたたき台を作ってください。

■商品・サービス
【例:20〜30代向けの敏感肌用スキンケア。単価3,000円、EC販売】

■実データ(あるものを貼る。生の言葉ほど良い)
・顧客アンケートの自由回答:【貼り付け】
・レビュー・SNSでの言及:【貼り付け】
・問い合わせやお客様の声:【貼り付け】
・購入データの傾向:【例:リピート率、よく一緒に買われる物】

■出力形式
ペルソナを2〜3案。各案について
・基本属性(年齢・仕事・暮らし)
・抱えている課題・不満(データ内の実際の言葉を引用する)
・情報収集の行動と、購入の決め手・ためらう理由
・この人に刺さる一言/逆にしらける一言

■条件
・データから言える部分と、あなたが補った部分を区別する。
  補った箇所にはすべて「仮説:」と付ける
・「買わない人」のペルソナも1人作る(その理由つき)
・最後に、この仮説をどう検証すべきかを3つ提案する

このプロンプトが効く理由

1
実データを先に渡す

アンケートの自由回答・レビュー・問い合わせ——顧客の生の言葉が、量産型ペルソナと自社のペルソナの分かれ目です。AIは渡されたデータの中の声を拾って人物に束ねるのが得意。材料がゼロのときの出力とは別物になります。

2
「仮説:」ラベルで事実と創作を分ける

AIの補完は禁止しなくていい——混ざるのが危険なのです。「データから言えること」と「仮説」を区別させれば、どこを信じてよくて、どこを検証すべきかが一目で分かる資料になります。

3
「買わない人」も作らせる

理想客だけ見ていると、施策は身内向けになります。「検討したけどやめた人」の理由——価格、信頼、面倒くささ——には、刺さるコピーや改善のヒントが理想客以上に詰まっています。

4
刺さる一言・しらける一言まで出させる

属性表で終わるペルソナは、作って満足して終わりがちです。「この人に刺さる/しらける言葉」まで落とすと、明日のコピーや投稿にそのまま使える道具になります。

アレンジレシピ

ペルソナと面接する

作ったペルソナをAIに演じさせ、「新商品の説明文を見せるので、この人として正直な感想を言って」と壁打ちする使い方。施策を世に出す前の簡易モニターになります(本物の顧客の代わりにはならない、を忘れずに)。

カスタマージャーニーに展開する

「このペルソナが商品を知ってから購入するまでを、行動・感情・接点の表にして」と続けると、ペルソナが施策の設計図に育ちます。どの段階の打ち手が手薄かも見えてきます。

データがないときは下調べから

新規事業などで自社データがない場合は、競合商品のレビューや公開されている調査を材料にします。AIのDeep Research機能に市場の声を集めさせてから作ると、想像だけのペルソナを避けられます。

現場の注意(ここで事故る)

顧客データは匿名化してから貼る

アンケートの自由回答や問い合わせ文には、氏名・社名・連絡先が紛れ込みがちです。貼る前に個人を特定できる情報を消す、会社契約のAI(入力が学習に使われない設定)を使うなど、顧客情報の扱いは社内ルールに沿ってください。

ペルソナは「検証前の仮説」として扱う

AIと作ったペルソナを、調査済みの事実のように社内資料へ載せないこと。「データ+仮説のたたき台」と明記し、できれば実際の顧客インタビュー2〜3人で答え合わせをしてから施策の根拠にしてください。

ペルソナ作成×AIのよくある質問

Q.実データが何もない新規事業でも使えますか?
A.

使えますが、出てくるものは全部「仮説」です。その場合も競合のレビューや公開調査など外部の生の声を材料にし、「検証方法の提案」を必ず出させてください。想像だけのペルソナで突き進むのがいちばん危険です。

Q.ペルソナは何人分作ればいいですか?
A.

まず2〜3案+「買わない人」1人が扱いやすい分量です。10人分作っても使いこなせません。実際の施策で軸になるのは多くの場合1〜2人で、残りは「この人は対象外」と判断するための比較台として働きます。

Q.一度作ったペルソナはずっと使えますか?
A.

古びます。市場も顧客も変わるので、半年〜1年ごと、または商品の大きな変更時に、新しいデータで作り直すのがおすすめです。過去のペルソナと並べて「何が変わったか」をAIに比較させると、市場の変化も見えてきます。

GAME — 遊んで身につける
AIの作業机
AIに渡す材料しだいで結果が変わる感覚をパズルで体験。ペルソナの質がデータで決まる理由がわかります。

レシピは覚えるより、今日の仕事でひとつ試すほうが早い。

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