「アイデア10個出して」で出てくるのは、誰でも思いつく10個。
AIはアイデア出しの相棒として優秀です。文句を言わず何案でも出すし、徹夜明けでも質が落ちない。ただし素朴に「アイデアを出して」と頼むと、返ってくるのは最大公約数の案——つまり、会議で誰かがもう言っていそうな案ばかりです。
理由は単純で、AIは大量の前例から「もっともらしい答え」を出す装置だからです。だから発想を飛ばしたいときは、わざと変な制約や視点を渡して、前例の真ん中から追い出す。そして出てきた玉石混交の案を、評価軸で絞る。この発散→収束の2段構えが、AIブレストの正しい型です。
「1. SNSキャンペーンの実施 2. インフルエンサーとのコラボ 3. 期間限定割引…」——どの業界のどの商品にも当てはまる、企画書の目次みたいな一覧が出てきます。間違ってはいない。でも、この10個から企画は生まれません。
情報がないAIは、あらゆる商品に通用する安全な一般論に寄せます。商品も、ターゲットも、予算も、何に困っているのかも知らないのだから、当然です。
もうひとつの罠は「10個」という数の少なさ。最初の10案は誰の頭でも出る案です。人間のブレストで「出し尽くした後の11個目」から面白くなるのと同じで、AIにも安全圏の在庫を吐き出させてからが本番です。
【 】の中を自分の状況に書き換えて使ってください。全部埋まらなくても大丈夫——埋めた分だけ、出力があなた仕様になります。
最初の10案は「出てくると分かっている案」の在庫処分です。先に出し切っておくと、そのあとの縛り付きの案が在庫の言い換えになりません。人間のブレストと同じ順序設計です。
「予算ゼロなら」「常識を1つ破るなら」のような制約は、AIを前例の真ん中から追い出す道具です。自由にさせるより、縛った方が面白い案が出る——ブレストの逆説はAIにも当てはまります。
商品から発想すると宣伝案になり、ターゲットの悩みから発想すると企画になります。視点の起点を指定できるのは、プロンプトならではの技です。
「実現性は後で私が審査する」と宣言すると、AIが自主規制で案を丸めるのを防げます。発散フェーズに評価を持ち込まないのは、ブレストの鉄則です。
案が出揃ったら「この中から、①実現しやすさ②ターゲットへの刺さり③新しさ、の3軸で各5点満点で採点し、上位5案の根拠を説明して」と続けます。発散と収束を別の指示に分けるのがコツです。
絞った案に「この案が失敗するとしたら何が原因か、意地悪な投資家の視点で指摘して」をぶつけると、企画書に書く「リスクと対策」の材料まで揃います。
「経理担当者・税理士・ITが苦手な社長の3人になりきって、それぞれの立場でこの案に一言ずつ感想を」と頼むと、会議室を借りずに多視点レビューができます。
AIの案は「発想の呼び水」です。出てきた30案の中の2つを組み合わせたり、1案の切り口だけ借りたり——最後のひとひねりを人間がやった案だけが、通る企画になります。
未発表の商品や戦略をお題にするときは、入力が学習に使われない設定のAIを使ってください。ブレストは話が乗ってくるほど、うっかり書きすぎる場面です。
合計20〜30案が目安です。少ないと安全圏から出ず、多すぎると後半が水増しになります。レシピのように「王道10+縛り付き5×4」のような構造で頼むと、量と質を両立できます。
縛りの種類を変えるのが特効薬です。「10年前なら不可能だった案」「子ども向けに説明できる案」「競合が真似しにくい案」など、縛り自体をAIに考えさせる(「発想を飛ばす制約を5つ提案して」)のも有効です。
両方です。一人なら壁打ち相手として、チームなら「会議前にAIで30案出しておき、会議は選ぶ場にする」使い方が効きます。会議の時間が発想ではなく判断に使えるようになります。
レシピは覚えるより、今日の仕事でひとつ試すほうが早い。